確信できない？ひとこと感想／中島みゆき編　５０音別

あ行


阿檀の木の下で
	この曲は、パラダイス・カフェを聴いてみて筆者が特に引っかかった曲でしたので、ちょっと考察してみます。　パラダイス・カフェには、日本語詞の歌詞カードの他に英語訳の歌詞カードも入っています。その英語訳の歌詞カードには『阿壇の木の下で』は『UNDER THE SCREW PINE TREE』と訳されています。つまり、阿檀は英語ではスクリューパインと解されていることになります。しかし、百科事典で調べると阿檀（百科事典では“アダン”と表記）は『Pandanus tectorius』（おそらくラテン名）となっています。で、この阿檀は蛸の木科の植物で、奄美諸島・琉球列島（沖縄）・台湾の海岸地帯に自生していて、つまりはアジアの温暖多雨の一部にしか生えていなく、アメリカやイギリスといったところでは阿檀はまったく馴染みのない植物ということになります。おそらく阿檀の実というのが、パイナップルの実にによく似ていて、さらにその実がねじれているように見えたことから、英対訳の担当者は阿檀を『SCREW PINE』と訳したのでしょう。　先程も言いましたが、阿壇は沖縄を中心に自生している植物です。で、そのことを念頭に置いて特に２番を聴いてみると… 「遠い昔にこの島は」（以下省略）（中略）「私の知らない決めごとばかり」（ここまで、記事をわかりやすくするため、『阿檀の木の下で』の歌詞を引用。作詞はもちろんみゆきさんです。）　前者の引用箇所は、昭和27年のサンフランシスコ講和条約発効により、日本本土が第2次世界大戦後から行われた連合軍の占領から解かれたのに対し、沖縄などは引き続き連合軍（アメリカ軍）の占領下におかれたということ言っているのでしょう。また後者の引用箇所は日米安全保障条約のことを指しているのでしょう。　で、3番の歌詞では『阿檀』は“アダン”と言っているのに対し、1番の歌詞では『阿檀』は“パンダウ”と言っています。これから考えると、『阿檀の木の下で』は少なくても、4半世紀にわたってアメリカ軍に占領されていた沖縄のことを歌っていると言う事になり、言わば“反戦歌”としてとらえることができるのではないかと思います。　このパラダイス・カフェが発売された1996年は、沖縄の土地のアメリカ軍強制使用の公告縦覧手続きを拒否したことなどが大きな話題でした。しかし、みゆきさん本人はこの頃発売された音楽雑誌で「いまだけの沖縄問題を書いたわけではなく、15年ほど前から持っていたテーマだった」と言っています。さて1996年から数えて15年程前はいっだったか、幅を持たせて計算すると、1981～1982年となります。つまり沖縄が1972年に日本に返還されて10年を迎えるか迎えたかのあたりということになります。いわばちょうど節目を迎えるというときにあたり、みゆきさんの心の中に沖縄について何か引っ掛かるものがあったかも知れません。もしかしたら、沖縄が日本に返還されて10年経ても、返還前とそんなに変わっていないのではないかということをみゆきさんも思ったのでしょう。（※この記事は１９９７年の２月～３月頃に書いたものを、今回のアップデートを機に一部手直しました。）

	阿檀の木の下で／パラダイス・カフェに収録２００５年０５月２１日更新


あの人に似ている
	かつて、松任谷由実と石井竜也（カールスモーキー石井）が歌った「愛のＷＡＶＥ」のように、さださんとみゆきさんのご当人が歌う「あの人に似ている」を聴きたいと思うのは私だけでしょうか（次点…「あの人に似ている」をさださんと玲子さん（※１）とが歌う）。
	上記のことを書いたのが１９９４年１０月頃でした。さらに１９９７年のはじめ頃にはこんなことを書いていました。
	とある日、Ａ・ＷＥＥＫ（※２）へ行ったとき、店内にはどこかで聞いたことのある曲が流れていました。しかしこの曲タイトルは一体何であるかが思い出せないでいました。30秒たってからでしょうか。やっとこのタイトルを思い出しました。その曲は「あの人に似ている」でした。　「あの人に似ている」は、さださんと中島みゆきさんとの合作で、唄は高倉健さんと裕木奈江さんでした。で、「古くさい」（※３）歌詞カードには作詞・作曲はさださんとみゆきさんの合作ということになっています。しかし、「古くさい」にはみゆきさん担当のコーラス部分が入っていません。ですから、「あの人に……」の「古くさい」バージョンは事実上さださんの作詞／作曲ですから、「古くさい」歌詞カードにみゆきさんの名前を入れなくてもよかったのにと思います。でも、そうなるとこの曲は「あの人に似ているVer2」にせざるを得なかったでしょう。　「あの人に……」の高倉健と裕木奈江のバージョンの編曲は渡辺俊幸さんでした。で、この「古くさい」バージョンも編曲は渡辺俊幸さんです。ですが、筆者としてはみゆきさんの曲の編曲を手掛ける瀬尾一三さんにこの曲の編曲をやらせたら良かったのにと思いました。また、みゆきさんバージョンの「あの人に……」、名付けて「あの人に似ているⅡ」も聞きたかったです。
	そんなことを書いて８年から５年近くの月日が流れた２００２年に、やっとさだまさしさんとみゆきさんご両人のデュエットで、さらに瀬尾一三編曲による「あの人に似ている」が世に出されました（拍手）。筆者はこれについての提案というか感想は、コンサート時に特に書き記すことはありませんでした（もしくは、忘れてしまったか）が…、長かった。でも、この「あの人に似ている」が収録されているみゆきさんのアルバム「おときばなし」のジャケットには、さださんが写っていませんでした。みゆきさんのアルバムだから不可能で当然…ではなく、やろうと思えば可能だったはずだと思います。実はさだまさしさんの専属カメラマンは、みゆきさんの専属カメラマンでもある田村仁さんですので。で、確か１９９４年頃に発行されたさだまさしファンクラブ会報「まさしんぐＷＯＲＬＤ」１０７号には、「あの人に似ている」の高倉健と裕木奈江のレコーディング風景が載っていました。当時のラジオによると、みゆきさんもこのときのレコーディングに立ち会ったようですが、さだ会報にはみゆきさんの姿はありませんでした。このときはまださだまさしさんの専属カメラマンは田村仁さんではありませんでした。（※１）佐田玲子。さだまさしの実妹です。（※２）昔原宿にあったさだまさしのタレントショップ（※３）さだまさしのアルバム「古くさい恋の歌ばかり」

	あの人に似ている／おとぎばなし-Fairy Ring-に収録２００５年０５月２１日更新

メインページに戻る